そう、さっきから慶汰のポケットに入っている携帯がうるさくて仕方なかった。
きっと鳴らしているのは慶汰の彼女しかいないけど。
『あ、ありさと今から会うんだ。この話はまた今度!だからまた家に遊びにおいで!じゃあな』
こう言って、慶汰の一番得意な営業スマイルを振り撒いて、部屋から姿を消して行った。
慶汰がいたという余韻だけが部屋に残る。
急に静かになった部屋には、雨の降る音しか聞こえてこない。
『これが…俺の秘密』
『…慶汰が嵐の兄貴?確かに似てるって思ったけど…』
『陽菜がもし慶汰を好きでも、俺は奪い返すよ?それにまだ陽菜が慶汰を好きか本人から聞いてねぇしな』
俺は自分を納得させるように呟いた。
その言葉は部屋全体に響き渡る。
すると紘人は急に立ち上がり、俺を見下ろした。
『慶汰が嵐の兄貴だって、陽菜には言うな。言ったら、陽菜はパニクって自分の気持ちを見失うから』


