空から降る幾つもの雫。葉っぱから滴り落ちる水滴。
この時、雨が降ってくれて良かったと思った。
なぜならば、俺は泣かなくて済んだから。
空が…泣いてくれている。
俺の分まで、強く。
衣服に染み付いていく雨。
俺が着ていたダウンが水玉模様をつけていく。
『…は?秘密?』
紘人は手で雨を防ぎながら、俺にこう言う。
お前に言いたいことがある。
お前なら聞いてくれるよな?
『雨降ってきたし、俺の家来いよ。ここからそんな遠くないし。家に来たら理由が分かる』
俺は静かにこう言って、自分の家へと足を進める。
紘人は黙ったまま俺のあとをついてきた。
きっと何かを悟ったのだろう。
俺より頭が良さそうだしね。
道路に水たまりが出来ていく。
跳ね返る水滴。
衣服に染み付いても、もうどうでもよくなっていた。
…そして、俺の住むマンションへと辿り着く。


