紘人はずっとそのことに悩まされてきて、ずっと自分の中に隠してきて、今ようやく弱音を吐けたことだろう。
ゆっくりと頬を伝う紘人の涙が、街灯に反射をしてきらっと光った。
俺は唇を噛んで、同情に負けないように耐えていた。
同情されたって嬉しくないのは分かっているから。
『紘人…俺…』
『なぁ、嵐。ひとつお願いがある』
『…な…に?』
ゆっくりと紘人の顔がこちらに向かれる。
紘人、お前にこんなこと言ってはダメかもしれないけど、今のお前…
最高にかっこいいよ…。
『…陽菜を守ってくれ…』
この言葉が耳の中に入ってきたと同時に、公園に植えられている桜の木が風によって大きく揺れた。
…陽菜を…
守ってくれ…。
その言葉を俺は全体で噛み締める。
守るよ…、守るから…。
だからもう泣かないでくれ。


