携帯を耳に当てると、慶汰の甘いボイスが聞こえてくる。
いつもと違う声。
何かに怒っている声だ。原因はなんとなく分かる。
俺、だろ?
『なんだよ?』
《お前、今日学校終わったらすぐに家に帰ってこい。寄り道すんなよ》
『は?なんで?』
募り出す。
そして思い出す。
陽菜の一言。
《嵐は慶汰に似てますね》
疼きだす。
そして苦しくなる。
これが恋の味。
《いいから帰ってこい》
慶汰はこう言って、電話を切った。
なにをそんなに怒っているのか分からない。
俺は携帯を閉じ、ポケットの中にしまう。
そして再びシャープペンシルを手に持ち、絵の途中を描こうとすると、心が荒れているせいか、さっきの途中からは描けない俺がいた。
唇を噛み締め、シャープペンシルをぎゅっと握る。
どうして絵さえ自由に描けないんだろう。


