寒気が走ったのか、
自分に《恋》という字が似合わなかったのか。
理由はこの2つで間違いはないだろう。
俺が恋?
笑っちゃうよ。
『恋なんかしてねぇから』
俺はすばるの顔をぎゅっと掴み、睨みつけた。
だけどすばるはそんな俺の態度に怯むことなく反撃をする。
『相手も分かっちゃったもんねー!!』
憎たらしい言い方。
殴りたいと思ったが、ここは抑えることにした。制裁はあとにしよう。
『それ以上、言うな』
更にぎゅっと力を入れると、すばるの口が鮹の口のようになっていく。
まるでひょっとこだ。
その顔を見ていたら、面白く、笑いそうになったがぐっと堪える。
『蒼井陽菜…だりょ?』
すばるが言いたかった言葉。
《蒼井陽菜だろ?》
ぎくりと反応する体。
すっかりもう俺は恋を初めていたようだ。
そんな俺の態度を見たすばるは、また怪しく笑う。


