ラブ☆バカリズム



 あたしは息を潜めて、ゆっくり匍匐前進しながらドアに向かった。ゴールはあそこだ。頑張れ、あたし。先生が起きたらTHE ENDだぞ。


「ふァあ……んー! よく寝た!」


 男の人の声だ。きっと先生が目覚めたに違いない。あたしは、生唾を飲み込み、さらに息を潜めて匍匐前進を試みる。バレませんように、バレませんように。


「すっかり寝ちまったなー。……で、なんでそんなとこで匍匐前進してんだ?」


 ぎゃー!! 思いきりバレてるー! 今にも爆発しそうな心臓を抑えながら、ゆっくり声の方へと顔を向ける。


「えーと、敵から身を潜めてまして……」

「敵?」


 わけわかんない事口走っちゃったァァ! 急いで口を塞いだけど、時すでに遅し。先生の眉間に皺がよっている。もう死を受け止める事しか出来ない……! あたしは目をギュッと閉じた。来るなら来い!!


「アハハ、お前面白い奴だな」

「へ?」


 不意に笑い声が聞こえて、驚きで変な声が出た。恐る恐る目を開けてみると、寺脇先生が笑っているのが見えた。あれ? 怒ってないみたい。


「でも、服が汚れるぞ?」

「あ、はい」

 そう言って慌てて立ち上がると、先生は席から立ち上がって、フワっと白衣を揺らしながらあたしの元まで来た。