高校を卒業して春休み。

ほとんどの人が教習所に行く。

田舎なので車がないと、とても不便。
バス停に行くまでも時間がかかる。
その上、バスの本数も少ないときてる。

一人に一台って言うくらいだ。


初日、当然同じクラスの人に会う。
しかも、好きな男の子にも。

何を着て行こう。散々迷う。

行く時間が迫る。

姉のお下がりのレモン色のセーターを着て行くことにした。

だけど、大変なことに気づいた。

右の脇の所に十円玉くらいの穴が開いていたのだ。 虫食いかな?

でも、もう着替える時間がない。

わざわざ右腕を上げることもないだろう。
そのまま行った。

ところが、どういう訳か皆でラジオ体操をさせられた。

好きな彼と目が合った。

恥ずかしい、けど嬉しい。 にっと笑った。


そ、そんな場合じゃない!
それは突然やって来た。


両腕を上げる体操があったのだ。
ど、どうしょう!?

セーターの脇の穴がバレちゃう!!

当然、左腕は真っ直ぐ上げたが、右腕は穴をカバーする為に不自然な格好。 少ししか上げられない。


教官が目ざとく発見する。

指差す。
「そこの人! 右腕、どうしたの? そこまでしか上げられないの?」

皆が一斉に私を見た。

彼も見ているだろう。

「いえ。」
小さな声で答える私。

観念して両腕を真っ直ぐ上げた。

誰も穴には気づかなかったみたいだけど、恥ずかしかった。


顔が見るみる赤くなっていくのが分かった。

赤い顔

黄色いセーター

青いGパン

まるで信号みたい。

可愛そうな私であった。