「かをりちゃんがそんなことを?」

「はい、斉木さんがいらしていただいてからかをりも何かがちょっと変わったんです。学校にはいけませんでしたが…」

裕二はただ聞いている。

「笑顔で先生にさよなら言えたよって笑顔で…これで新しい人生進むからって言ってたんです。」


綾香は流れる涙を抑えられない。

「かをりちゃん…」

次の言葉は出なかった。

「次の学校では最初は上手くいってたんです。でも1ヶ月くらいたった頃でしょうか?噂が出てきて…」

かをりの母はまた涙を拭う。

「泥だらけで帰ってきて…言ったんです。「お母さんごめんね。また噂になっちゃった。」って…自分の方が辛いはずなのに私達を気遣って…」

「かをりちゃんは優しい子でしたものね。」

綾香が涙を拭きながら言った。

「平沢…」

裕二はかをりの遺骨に向き直って言った。

「ごめん…ちゃんと相手してあげなくてごめんな…」

そう言って耐えられなくなったのか大声でかをりの遺骨に向かって泣き始めた。

「裕二君…!」

綾香とかをりの母は驚いた。
するとかをりの母が言った。

「先生、ありがとうございます。かをりのために泣いてくれたのは家族以外では先生が初めてです。斉木さんも…ありがとうございます」


「かをりのこと…少しでもいいから覚えていていただけると嬉しいです。」

そう言ってかをりの写真に「そうよね。かをり」と微笑んだ。