「綾香ありがとな」
突然裕二がいう。
裕二の部屋でぽつりと言った。
「へ?」

明るい顔で裕二が続ける。

「平沢、『ありがとう。ごめんなさい』って言って転校してった。明るく笑って…何か言ったんだろう?」


「笑ってた?良かった」


綾香も嬉しくなる。

「裕二君のおかげだよ」
「え?」
「ブレスレットに願がけてかをりちゃんの所に行ったの。裕二君がついてるから頑張れって」
嬉しそうにブレスレットを見る。

裕二は顔を赤くする。
「あのね、綾香…」
「ん?」
裕二は言葉を選ぶ。
「その〜嬉しいとか会いたいとか外で言っちゃ駄目だよ」
綾香には意味がわからない。
「何で?」

「それはただののろけだから」

綾香はびっくりする。

「え?私そんな事言ってた?」
「ガンガン言ってる。職場でも言ってんじゃないの?」
「ええ?」

のろけ?
えぇ〜〜私言ってた?
ただ、思ったことを言ってただけなのに…

綾香が落ち込むのを察知して裕二が言う。
「俺の前ではいいからね。やっかむ連中の世の中にはいるってことさ」

綾香は考えながら「うん」と言った。