「おぎゃあ!おぎゃあ!」
元気な泣き声がこだまする。
「う…産まれた…」
裕二はへたりと座り込んでしまった。
「おめでとう!」
両親や綾香の両親が口々に言葉を浴びしてくる。
しばらくすると看護師さんが「女の子ですよ」と教えてくれた。
「綾香…?」
そろりと聞くと綾香は微笑んだ。
そして
「すっごい痛かった〜!もーやー!!」
と言い始め、裕二は笑ってしまった。
「女の子だって」
と裕二がいうと「うん」と微笑んだ。
「やっぱ名前は綾音だな」
「うーん…そうかな」
幸せに満ち足りた時間だった。

自分の赤ちゃんを見てもまだ父親の実感がない。
本当に俺の子供なんだ…
言い聞かせるように裕二は思った。
「これからが大変よ」
母は裕二にそっと言った。
「た、大変かな?」
「そりゃそうよ〜歩くようになるまでは泣きわめくわよ」と、母はニヤリと笑った。
「協力してあげないとね」
その言葉に「うん」と頷いた。