考えてなかった訳ではなかったが今の状態ではと思っていたのだ。

家に着いて部屋に入って考え込んでしまっていた。
すると頭にまた声が響いた。

『先生は大丈夫。私行くね』

突然のことに驚いて裕二はかをりに向かって言った。

「え?行くのか?いや、成仏した方がいいけどせめて綾香に何か…」

自分でも何を言ってるのか分からなかった。
しかしもうかをりの声が聞こえることは無かった。


「かをりちゃんが?」

裕二がかをりが逝ってしまったことを伝えると綾香も複雑だった。

「そうよね…ずっとこの世にいるよりも天国行った方がいいものね…
でも…寂しいな。この間のお礼も言ってなかったのに…」

しゅんとしてしまった綾香を見て、何とか元気になってもらいたいとは思ったが自分でも予想外の事が口から出た。

「俺…復職するよ」

「へっ!?」

綾香は驚いて裕二を見た。
正直裕二自身も自分に驚いたが続けた。

「平沢が先生は大丈夫って言ったんだ。だから大丈夫だと思う」

そう言って言葉に出したら何だか気持ちが軽くなった。
そうだ、平沢が守ってくれた命だ。綾香も守ってくれた。きっと平沢には分かっていたのだ。だから成仏しなかった。でも大丈夫と言って成仏したってことは、もう平和になるって事だ。

「で…でもね?裕二君…」

心配そうに裕二を見る綾香を見て

「大丈夫」

そう言って不敵に笑った。

その笑いはかをりが一目ぼれした不敵な笑みそのものだった。