裕二はA病院にいた。

「きっと分からないと思います」

看護婦さんが言う。

「とりあえずドアの前まで行きます」

ドアの前に立つと「ここです」と看護婦さんが言った。

そっとドアの窓を覗く。

そこにはただ呆然と座って何かを言っている黒井がいた。

「今は自分の名前とか、友人とか分からないと思いますよ」

「そう…ですか」

裕二は複雑な気分だった。

黒井は職場…学校で生徒にいじめられていたそうだ。
それがストレスになっていっていたという。

そんな時、幸せそうな俺と綾香に会った。

綾香が側にいたら幸せになれるかもしれないと思ったそうだ。


「ただ…幸せになりたかっただけなんだな…黒井」

「今はただ、自分の世界を作っていて幻聴と楽しそうに話している感じって言ったらいいんでしょうか？」

お礼を言って裕二は病院をあとにした。

綾香には、言う必要はないだろう。



とにかく、終わったんだ。

それだけが確信持てたことだった。