綾香の家に着く。

「車だとすぐだね」

綾香が申し訳なさそうに言う。
裕二は無言で頭をなでた。

「カーテンとかちゃんと閉めて寝るんだよ。鍵も」

綾香は不安そうにうん、と言った。

「明日は何時に迎えにいけばいい?」
「えっと…8時までに会社に着いてればいいから……」
「じゃあ、一駅だから7時半くらいに迎えに来ようか?」
「うん、それくらいだと助かるかな」

綾香の髪をなでて家に入るように促す。
綾香が家に入ったのを見てから裕二は自宅に帰った。

さっき居た場所には黒井はいなかった。
バックミラーでも黒井はついてきてなかった。

「家に帰ったのか…」

裕二は家の駐車場に車を止めて家に入った。

「ただいま」

裕二の声に母が出てくる。

「綾香ちゃんはどう?」

「ん…やっぱり不安そう。明日は7時半くらいに送りに行って来る」

「そう…女の子だもの。凄く怖いと思うわ」

母はため息をついた。

「黒井君がそんな事をするなんてね。裕二はどうするの?」

「守らないと。俺しか出来ないから」

「…分かったわ。お母さんも協力するからね」

「ありがとう」

そう言って裕二は部屋に入っていった。

今はもう綾香ちゃんのことしか頭にないようだ。
自分のことは言わないのがいいのか悪いのか母には分からなかった。