先生の天使

裕二はあっさりと精神科に行く事を承諾してくれた。

綾香も有給で休みを取り、ついていくことにした。

精神科と言ってもそんなに怖いところではなかった。
どこが悪いのかしら?なんて思う人ばかり。
綾香はどこかほっとしていた。

「上屋裕二さん、2番にどうぞ~」

と先生みずからドアを開けて言った。

3人は診察室に入っていった。

「お座りください」

優しそうな男の先生が裕二を促す。
裕二は言われるままに椅子に腰掛ける。

「どうされましたか?」

綾香が話そうとすると母が止めた。
それを見て先生は続けた。

「何か辛いことがありましたか?」

初めて裕二は先生を見た。
そしてぽつりぽつりと話始めた。


自分が歴史の中学教師なこと。
それなりに自分に自信を持っていたこと。
かをりの自殺…
死なせてしまった後悔。
寝れないこと。
食欲も無いこと。


先生はカルテに書きながら熱心に聞いていた。

それが安心したのか裕二は泣き出した。

「先生、俺…今まで自分がどうやって生きてきたか分からなくなっちゃったんです…俺…平沢一人にしておけないから死んだ方がいいんじゃないかって思うんです…」

その言葉に綾香と母は仰天する。

「死んだほうがいい人なんていないんですよ。今ちょっと休息が必要だっていうことです。死んだらこうして心配してくれてるお母様や彼女さんはとても悲しむと思いますよ。」

その言葉に裕二は返事をせず、ただ泣いていた。