それでも僕は慰めてやることが出来なかった。
動くことも話すこともできないぬいぐるみの僕は、ただ彼女が悲しむのを、傍で見ることしか出来なかった。
何十年もそうしてきた僕なのに、この日ほど歯がゆいと感じた日は無かった。
そう思うほど、彼女の涙はとても悲しみに満ちていたのだ。
悔しくて、僕は彼女と一緒に泣いた。
2人は泣いて、泣いて、泣きまくって、もうなぜ泣いているのか分からなくなるくらい泣いた。そうしたら、彼女はまた、笑顔になった。60年前とはまた違った、少しさみしそうな笑顔だった。