‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 「今宵のお渡りはお華さまのほうへされます」 藤野が報告した。 「────…お渡りなんて……ただ上様のいうなりにされるだけじゃない」 「しかしもしも、懐妊されたら姫様は大奥でそれ相応の地位につきます。 なんせ上様には御子がおられませんから」 懐妊──… 私に子供? 「ありえないわ。正室さまはどうされたの」 正室は正式な妻で 側室はいわば愛人だ。 「正室さまは御病弱で………」 「だから側室がのさばっているのね」