「悠希ちゃん、ちょっといい?」



長閑な昼下がり、ぼんやりと店番をしていた私にお菊さんが声をかけた。



「左介さんとこのお団子屋さんに、これ持って行ってくれへん?」


渡された風呂敷の隙間からは鮮やかな紅の布か見えた。



「娘さんが、ご結婚なさるんやって。」



めでたいよね、と、お菊さんは笑った。



「なんか…幸せそうですね、お菊さん。」


「そりゃ幸せよ。うちの着物で幸せの瞬間を迎えてくれるんやからね。」



人の幸せに、携われる幸せ。
そんな些細なものに、人は救われたりするのかな。



私にはまだわからないけど、それはきっと、とても、幸せに満ち溢れた温かいもの。





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