「2人とも、最初は父親の遺志に従うつもりで行動してたらしいわ」

しかしほどなく、自分たちは本当に父親の遺志に従っているだけなのかと考えるようになった。

ただ自分たちが利益を得たいから行動しているのではないか、と思うようになった。

そしてそれは林の中で父親の遺体と対面した時に確信に変わったという。

自分たちがとんでもない間違いを犯したと、あの場ではっきりと認識したそうだ。

「あの林の中の涙は、本物だったのかしらね」

「そう思わなきゃ、やってられねぇよ」

達郎はつぶやくように言った。

その瞳には、憂いの色。

その色はいつもより、だいぶ濃いように見えた。

しばらく考えて、その理由がわかった。

達郎は早くに母親を亡くしている。

そんな達郎だから、肉親に対する感情は他人よりも特別に出来ているんだろう。

だから今回のような事件の時には、いつもよりもナーバスになる。