その遺書には息子夫婦へのこれまでの感謝と、死を選ぶことへの謝罪、そして自分の死を他殺に見せかけるようにという文言が綴られていた。

『自殺では保険金はおりない。だから自分の死は他殺に見せかけろ。これが私なりの償いだ』

遺書はそういった内容であった。

「今回の事件は広義の遺志だったっていうのか」

達郎は、あらぬ方向を見ながら言った。

「遺書は確かに広義が書いたものなんだな」

「広義は話すのも辛い時は筆談をしてたそうだけど、その筆談メモをもとに筆跡鑑定した結果、遺書は広義が書いたものに間違いないそうよ」

広義は命を絶つ直前、這いずって書き物机まで行き、そこで遺書をしたためたと思われる。

「捜査本部は事件を洗い直した結果、鳥海広義を自殺と断定。哲夫と光子の夫婦を死体遺棄の容疑で逮捕したわ」

2人とも取り調べには素直に応じている。

ただ、どちらも憔悴しきっているのだという。