「恐らくな。そのことによって息子夫婦は、見返りが欲しくなったんだと思う」

「それが保険金…」

「ああ」

達郎はうなずいた。

「でも待って」

あたしは肝心なことを思い出した。

「広義の死亡推定時刻は9月7日の午後10時から8日の午前0時の間よ?」

その時にはもう広義は拉致誘拐されたことになっていて、地元消防団による捜索が行われていた。

そしてそれ以前には息子夫婦の通報で、警察の現場検証も行われている。

「広義が自室で死んだのなら、状況が全くかみ合わないわよ?」

「庭だよ」

達郎はことも無げに言った。

「夫妻は庭に広義の遺体を埋めて腐敗を遅らせ、死亡推定時刻をずらしたんだ」

あたしは以前受けた、法医学の研修内容を思い出した。

死体の置かれた場所によって、その腐敗速度はずいぶん違うという。

空気の流通がよい場合、腐敗はどんどん進むが、悪ければ遅れるそうだ。