「林さん、この写真…」

「その写真はね、K町の風景ってテーマで撮ったうちの1枚さ」

いや、訊きたいのはそういうことではなくて。

「この写真を撮ったのはいつですか?」

「確か盆が明けた頃だったかな」

先月末に現像し、今月の初めから店頭に飾っているという。

この写真が確かだとしたら、3体のうち1体のマネキン人形はどこに行ったのだろうか。

9月8日にあたしたちが見つけたマネキン人形がそうなのか。

だとしたら、あのマネキン人形を捨てたのは、やはり鳥海夫妻?

しかし一体、何のために…?

「達郎…」

だが達郎は、あたしの呼び掛けに答えてくれなかった。

その代わり、瞳には光が浮かんでいた。

いつも浮かんでいる憂いのそれとは違う、すべての真実を見通さんとする光。

あたしはあわててカバンから缶コーヒーを取り出すと、達郎に手渡した。

達郎には変な癖がある。

事件を推理する時、必ず缶コーヒーを手にするのだ。