でも一体、何のために?

達郎が再び目配せをしてきた。

店のドアをアゴで指している。

【もう充分】という合図だろう。

「それでは、また何かありましたら…」

あたしは糊で貼り付けたような挨拶をして、店のドアへ向かった。

達郎が先を歩き、あたしがその後についてゆく。

「ああ、そうだ」

達郎はドアを押しながら振り返った。

「我々はこの後、写真館へ行きます。何か思い出しましたら、まずそちらへと御足労願えますか」

達郎はさらにこう付け加えた。

「写真館というのは昨日、襲われたという写真館です」

達郎はそれだけ言うと、さっさと店を出た。

あたしもそれに続きざま、ちらりと鳥海夫妻に目をやった。

鳥海夫妻の顔からは、表情というものが抜け落ちていた。