光子に至っては不安げな面持ちのまま、今にも店の奥に引っ込んでしまいそうだった。

「特に意味はありません。ただ、気になったものですから」

その言葉とは裏腹に、意味ありげな微笑を浮かべながら、達郎はあたしに目配せをして、庭の話を終わらせた。

達郎のこういう仕草は、あたしに交代を促すサインだ。

「いくつか確認したいことがあるのですが」

あたしはとってつけたように手帳を開いた。

そこからしばらくはあたりさわりのない会話が続いた。

北島警視から聞いたアリバイの確認や、仁藤のところで聞いた広義の病状などが話の主となった。

その間、達郎の視線は店の一画に集中していた。

そこにあったのは婦人服を着た2体のマネキン人形。

ここは衣料品店なのだから、マネキンが置いてあるのは不思議じゃない。

店の奥、店頭から見えない位置に置いてあったのも、閉店中であることを考えれば納得できる。