居直ったのならその場で口を封じればいい。
寝たきりの老人とはいえ、人を1人連れ出すにはかなりのリスクを伴うはずだと、達郎は言った。

「確かにそうね」

それにも関わらず、目撃証言は一切ない。

あまりにも手際が良すぎると言えるだろう。

「でも実際、広義の遺体は自宅から離れたところで見つかってるのよ」

むろん寝たきりの老人が1人で行けるような場所ではない。

状況から考えて、鳥海広義が何者かに連れ出されたのは間違いないのだ。

達郎は唇を尖らせたまま、しばらく天井を眺めていた。

やがて

「死因は窒息死か?」

と、つぶやくように言った。

「報告だと頸部に帯のような索状物を巻いて引き絞めたことによる窒息死となってるわね」

「帯?」

「鳥海広義は事件当日、浴衣を着ていたの」

しかし遺体は浴衣を着ておらず、下着姿だった。

犯人は浴衣の帯を使って広義を絞殺。

その後、浴衣と帯はどこかに処分した‐N県警ではそう見ている。