家の前で、何となく違和感を覚えた。

 「ただいま~。」

そういって玄関を開けた私の目の前には、今朝までの生活はなかった。

十数年暮らしたこの家が、跡形もなく無くなっている。


 わたしは、その場に鞄を落とした。


 「あら~聖也ちゃん。」

声をかけてきたのはうわさ話の大好きな近所のおばさん。

頬紅がやけに赤かった事を憶えている。