大藪とはよく目があったんだ。

何かを言いたそうなその目が気になっていた。

そんな時だった。

俺の出席簿に

 〖助けて〗
と書かれたメモが挟まっていたのは。


俺の、頭には大藪が浮かんだんだ。

でも、大藪はいつも小峰達と一緒に過ごしていた。
けして、ひとりではなかった。


俺は、小峰を職員室に呼んだんだ。

深い意味はなかった。

クラスの誰かが悩んでいるとしたら、それはクラスで解決していかなければと考えての事だった。

俺はまだ青かった。


 「小峰、クラスで変わった事はないか?」

 「ないですよ。どうかしたんですか?」

 「いや、それならいいんだ。 小峰クラスに目を配っておいてくれ。
何か気になったら俺に言ってほしい。」

 「わかりました。」

ただ、それだけの会話だったんだ。

けして、あのメモの事は口にしていない。

学級委員の小峰なら、何か知ってるかもって思いがあった。
でも、そうではなくて。

あのメモは〝イタズラ〟かもしれない。
イタズラであってほしいって思っていた。