俺は、再び店内に足を踏み入れる。

さっきは、あまりの衝撃に心が乱れてしまった。

俺様は今は 幸。

クラブ紫苑のオーナー。

俺はゆっくりと息を吐くと、幸へと気持ちを切り替える。


淡々と業務をこなす俺の心は、事務所で待つ深海の事でいっぱいだった。


 「オーナー」

 「はい。」

 「新人が何か失礼なことでも・・・。」

店長が心配している。

 
 「イヤ。彼女の源氏名は?」

 「瑠璃です。彼女けっこう人気あるんですよ。」

 「そうみたいだな。」

店には、瑠璃を指名する客もいるようだ。

新人にしては快挙だな。


でも、あいつはまだ学生で、それも俺の生徒だ。

もうここでは、雇う訳にはいかないんだ。