めったに顔を出す事のない店だが今日はどうしても顔をださなければいけない。

親父の後を継いで、引き受けた店。

いつもは、店長にまかせっきりな店だが、月に何度かは必ず顔を出す。

そう今日がその日なんだ。

今日は、新人のお披露目と従業員に給料を手渡すという大事な仕事がある。


俺は、夜用のクローゼットから黒いスーツを取り出すと袖を通す。
昼間とは違って、ピシッと背筋が伸びる。

髪もセットし、コロンをかすかに身にまとう。

もうここにいるのは、教師の工藤 幸ではない。

夜の顔、幸なんだ。