『瑠璃!!』


俺の叫び声にビックリしたのか、胸元で眠っていた瑠璃が飛び出した。

俺は、慌てて名前を呼んだ。

瑠璃は聖也の顔ををペロペロと舐めまわす。

離れていても憶えているのか・・・
尻尾は今にもちぎれそう。


 「瑠璃、飛び出したらいけないだろう。」



俺は瑠璃を捕まえると胸元に戻す。


 「瑠璃って。」

俺の顔を真っすぐ見上げている。

 「こいつの名前。 深海がなかなか決めないから俺が決めた。」

 「それって・・・。」

 「良い名前だろう?」

ビックリした顔を隠せない聖也。
そうだよな。
お前の源氏名を勝手にワンコにつけてるんだもんな。

でも、そうでもしないと、耐えられなかった。
聖也のいない毎日が俺には耐えられなかった。




 「立てるな。」

俺は聖也に手を差し出した。

 「先生、わたしの手・・・お父さんを・・・」

けして、握ってはくれない。
ただただ、泣いていた。


 「わかってるから。何も言わなくていいから。 帰ろう。俺たちの家に。」



俺に出来る事。
聖也の手をおもいっきり握りしめる。


久々に抱きしめる聖也の感触。

もう二度と離さない。

俺の胸で泣く聖也を瑠璃がペロペロと舐める。