海風は思ったより冷たい。
チラチラと降る雪が風に乗って、舞い落ちる。
手のひらで受け止めては解ける雪。
誠君が、上着を脱ぐとわたしの肩にかけてくれる。
「誠君、風邪ひくよ。 」
「いいって。 寒いから着てろ。 」
肩から、優しいぬくもりが伝わってくる。
雪は、海に降っては解ける。
「聖也、俺と付き合ってくれないか。」
いつもおちゃらけの誠君からは想像できないほどの真剣な口調。
海を真っすぐ見つめる誠君。
「わたし・・・。 」
答えが見つからない。
なんて言ったら伝わるの?
手のひらで解けて無くなってしまう雪をただただ眺めていた。
「いいんだ。 聖也の過去に何があっても。 俺は今目の前にいる聖也を好きなんだ。」
力強い、誠君の言葉に揺れなかったかといったら嘘になる。
『過去に何があっても・・・』
わたしの過去は誠君が思っている以上だよ。
わたしは、この手でお父さんを殺そうとしたの。
人を傷つけた人間なんだよ。



