「突っ立ってないで座る!!」

 「はい。」

教師口調の先生。

いつもより、なんとなく厳しい。

何か怒らせちゃったかな・・・。



でも、差し出された温かいコーヒーにホッとしてしまうのは、先生がやっと笑ってくれたから。

 「深海、遠慮するな。 ここは今日から深海の家なんだから。」

 「はい。」

 「好きな部屋を使えばいい。足りないものは買いに行こう。」

 「はい。」

 「それと、バイトの件だが、何もするな。 」

 「でも、それじゃ・・・。」

 「小遣いなら、俺が渡す。」

 「それもあるけど・・・。 生活費まで先生に甘えられません。」

 「バーカ。 そんなの気にするな。」

 「気になります。」

先生は、コーヒーを一口口に運ぶと困った顔になる。

 「深海の気持ちはわかった。 俺のメイドってどうだ。」

 「メイド???」

 「そう。 俺の身の回りの世話。食事の支度に片づけ。 洗濯に掃除。それから・・・」

 「つまり、家政婦ですね。」

 「そうだな。」

 「わかりました。 こう見えても家事は得意なんですよ。」

 「それと、俺と深海が一緒に暮らしてる事は絶対『秘密』。」

わたしの声が先生の声とハモル。
先生の言いたい言葉がわかったから。

 『秘密』

 「そのくらいわかってます。」

そうか!!って顔の先生に笑顔で答える。