けれど今までそんな考えがまったく浮かばなかったのは、

僕らが過ごした日々の中で、着実に家族としての絆を深めていったからだ。


「――拓人!そろそろ帰ろっか」

「えっ、ああ……」


いつも通りの桜子ののん気な声が、微妙な空気を一瞬で溶かした。


「サチコ、ノゾミ。私、先に帰るね。」

「えっ……このあとの卒業パーティーは?」

「ごめん、パス。“お兄ちゃん”とデートだから」


ばいば~い、と言い残すと、

桜子は僕の腕を引っ張って校門のほうへと歩き出した。







.