「……すみません。その指摘してあげなかった友達って、私たちなんです……」
「えっ」
「あーっ!サチコ、ノゾミ」
桜子は大きく両手を広げ、ふたりに抱きついた。
「ごめんねえ、サク。私たち、全然タグに気づいてなくて」
「ううん。サチコもノゾミも、クラス違うんだから仕方ないよお」
「けど、無事に卒業できたんだから万歳だよね」
「そうだね!」
女の子特有のハイテンションに押され、僕は所在無く立ちつくす。
桜子の友人だというこの二人は、化粧っ気のない素朴な18歳といった感じの女の子で、
僕のまわりにはいないタイプだ。
しばらく3人のやり取りを聞いていると、
サチコと呼ばれた背の高いほうの子が急に僕に向き直った。
「サク。この人は?」
「私のお兄ちゃん」
あまりにさらりと桜子が答えたので、思わず咳きこんでしまった。



