雪花-YUKIBANA-

「じゃあ、俺はそろそろ寝るから。桜子もちゃんと寝るんだよ」

「はーい」

「ほんとにちゃんと寝られる?」

「眠れるよ。子供扱いしないでくださーい」

「子供だろ」

「けど今日、大人に一歩近づいたもんね」

「たしかに」

「拓人を追い越す日も近いんだからね」


でもさあ、と僕は言った。


「俺、今日ひとつ年とったから、また桜子との距離開いたな」

「あっ!」


桜子が、ハッとしたような表情で叫ぶ。


その顔が可笑しくて、憎たらしいほどに、かわいかった。



「じゃ、こんどこそホントに俺は寝るから」

「はーい」

「桜子も。おやすみ」

「はーい」

「こら!聞いてんのか」


おでこを軽くこづくと、桜子は逃げるように二階の自室に戻っていった。


ケラケラと陽気な笑い声が階段の方から響いている。


明らかに、完徹のあとのハイテンション状態だった。






.