うまく状況が飲み込めず、僕はテーブルの前にぺたりと座り、目をしばたたかせた。


「どうして、……俺の誕生日がわかったんだ?」

僕自身ですら、忘れていたというのに。


桜子は得意そうに笑って、小さな手帳のようなものを差し出した。


「何これ?」

「見てみて」


受け取ってページをめくってみると、すぐに分かった。


母子手帳だ。


僕が知らない時代の、母が記した記録――。


「本棚の整理をしてたら出てきたの」

僕のとなりに座って、桜子が言った。

「すごく大切そうに、アルバムといっしょに仕舞ってあったよ」

「アルバム?」

「そう、拓人の子供の頃のアルバム。
……可愛かったなあ。
拓人は子供の頃から背が高かったんだね。目が細いのも変わってない」


見てみる?と桜子が目で問いかけた。

僕が首を横に振ると、彼女は少し残念そうな顔をした。


「おもしろいのになあ。鼻水たれてる写真とか」

「おいおい。さては俺をからかいたいだけだろ?」

「違うよー。私はただ、うらやましかっただけなの」

「うらやましい?」