それから、
家事はふたりで分担しよう、
というのもルールのひとつだ。


けれど実際には桜子が
そのほとんどを担っている。


僕がさぼっているわけじゃなくて、
いつのまにか桜子がさっさと片付けてしまっている、
といった感じで。


はかなげな美少女風の外見からは想像つかないほど、
彼女は実にパワフルに、日々の生活をこなしていた。


一人暮らしのときはいつも脱衣所に山積みだった僕のシャツが、

彼女の手にかかればあっという間に純白に生まれ変わる。


ピンとしわが伸ばされて、柔軟材の甘い香りもする。


桜子がいるこの家は、
僕にとっては初めて見るような光景の連続だった。


整然とかたづけられた部屋。

とぼしい材料で、彼女が手際よく作ってくれる料理。



……ここは、本当に、
僕が子供の頃すごした長屋だろうか?


時々、信じられなくなることすらある。






.