そんな小さな体をひょいと退けて起き上がり、
僕はベッド脇に置かれた目覚まし時計を見る。


午後3時半。


西に傾きかけた太陽が、うっすらと部屋を照らしていた。


「……桜子。起こすの早すぎ」

「何か言った?」

「いいえ何でもないです」


いつも起こしてくれて助かってます、

と僕は大げさに頭を下げる。


「でしょ?」


満足そうに、桜子が笑った。




東京に来て二ヶ月。


このいささか粗暴な目覚ましさえ除けば、
僕らの新生活は順調そのものだった。


同居にあたってまず、僕たちが決めたルールというのがいくつかある。


お互いのプライバシーは守ること。
(はたして桜子がちゃんと守っているのかは疑問だけれど)。


夏ごろからベランダにできたという鳥の巣を、今後も温かく見守ること。