「拓人、おはよーっ!」


ドスン!

と腹の上に落ちてきたやわらかい物体のせいで、目が覚める。


「……っ」


うめき声をあげようとしたけれど、音にならなかった。


僕はおそるおそる黒目だけを動かして、腹の上を確認する。


“やわらかい物体”の正体と、目が合った。


「おはよっ!」

「桜子……」

寝起きのかすれた声で僕は言った。

「頼むから普通に起こして」


えへへ、と桜子が笑っている。

何がそんなに楽しいんだろう?


僕は毎日こんな感じで、
彼女に安眠妨害されるのだ。


「拓人。早く起きなきゃ遅刻するよ?」

「……君が重くて起きられないんだけど」

ちなみにこれは嘘だ。


小柄な上に、女性としての肉付きもまだまだ未熟な彼女は、
はっきり言って子供みたいに軽い。