目の前の光景が慌しくなる。

視界が変色する。

僕と桜子の世界が、ずれてゆく。


「――……ッ」


叫び声を上げた。

けれど聞こえなかった。


「血が止まらないんだ」と義広が言う。

それだけは、やけにハッキリ聞こえる。


……血?
桜子から、血が流れているの?


だったら僕の血液をぜんぶ彼女にあげればいい。


兄妹でないことをあんなに喜んでいたけれど――
いっそ同じ血を持つ者同士になって、彼女にぜんぶあげればいいんだ。


なのに、どうしてそれができない。


どうして先生は真っ青な顔をしているの?


どうして、僕はこんなにも、桜子から遠いの――…?!




崩れ落ちるように寄りかかった窓の外は、雪だった。


この雪に、桜子は気づいたのだろうか。


ねえ。

病室の窓から桜は見えなかったけれど。


この雪花は、

君の瞳に届いていた……?



けれどその答えを聞くことは、できなかった。