雪花-YUKIBANA-


胸の痛みでつぶれそうだった。

みぞおちの辺りがヒクヒクと動いて、体中に力が入った。


桜子はつないでいない方の手をそっと上げて、僕の頭に置いた。


「バカだね、拓人は」

「……」

「大丈夫。死なないよ」


それは、誰のことを言っているんだろう。


けれど尋ねることができなかった。


悲しくて、不安で、

どうしようもなく苦しかった。


「赤ちゃん……拓人に似た男の子がいいな」


桜子がつぶやいた。


「背が高くってね、キツネ顔なの」


僕は弱々しく笑う。


男でも女でも、そんなのどっちでもいいんだ。

赤ちゃんと君が、生きてさえいてくれるなら。


――『死なないよ』


そう、僕は、

やっぱり3人で生きていきたい。









……彼女のベッドにうつぶせたまま、知らぬ間に眠っていた。


ずっしりと重い疲労感の中、目を開けると、窓の外はすでに暗くなっていた。


「やばいっ、仕事!」


あわてて体を起こす。

と、桜子と目が合った。