桜子から聞いて想像していたのよりも、少しは立派な店だった。
店内は案外広く、僕らのほかに客が3組いる。
エプロンをつけた50代くらいのおばさんが、僕とコバの前に水を置き、
やる気のない口調で「ご注文は?」と言った。
「あ、チャーシュー麺で」
「んじゃ俺は天津飯」
おばさんはサラサラとオーダーを記入すると、何も言わずに厨房の方へ去っていく。
僕は水を一口飲み、あらためて店内を見回した。
飾り気のない内装が、店をよけいに広く見せている。
整然と並べられた白いテーブルや椅子が、どこか社員食堂を思わせた。
しばらくしてチャーシュー麺と天津飯が運ばれてきた。
さっきのおばさんはここでもやはり、ニコリともしなかった。
「……あ、けっこう美味い」
スプーンを口に運んだコバが、意外そうにつぶやく。
「うん。けっこういけるな」
僕の方もなかなかの味だ。



