僕の、
子供時代のアルバム――
茶色く変色した厚みのある表紙に、母のものと思われる字で「拓人」と書いてあった。
……いつだったか、桜子が本棚から見つけたと言っていたっけ。
こんな所に大事に仕舞っていてくれたんだ。
こそばゆい嬉しさに、顔がにやける。
ふと、僕は彼女の言葉を思い出した。
――『私には小さいころの写真なんかないの。
たぶん、この家に来るときにぜんぶ捨てたのね』
けれど
ひょっとしたら、一枚くらい紛れこんでいるかもしれない。
この、ぎっしりと詰まった押入れのどこかに……。
そう思うと同時に、僕は次の段ボールのふたを開けていた。
季節外れの洋服や、
年代モノの毛布、
父が愛読していたと思われる小説…
いろんな物が時を経て僕の前に現れた。
まるで宝探しのような、心躍る行為だった。



