一回忌の翌日のことを、気にしてこなかったといえば、嘘になる。

僕も桜子も無意識のうちに、話題にすることを避けてきたけれど、

もやもやした感情は、いつも胸の奥にあった。


あの日の叔父の、切羽詰って我を忘れたような顔は、はっきりとまぶたに焼き付いている。


桜子の肩を鷲づかみにした手は、

間違いなく、僕から引き離そうとするものだったから……。


「拓人さあ、今朝、誰かと話してなかった?」


朝食の途中で突然そんなことを言われ、ぎょっとした。

「え?!何が?」

「電話、してたよね?」

「ああ……うん。あれだよ、間違い電話」


嘘をつくと、どうしてこうも舌が回らなくなるのだろう。


途切れた言葉を食事のせいにするように、僕は茶碗の中身をいそいで掻きこんだ。