「つまり、君が好きってこと」
「……」
「桜子は?」
「……好き」
「よかった」
彼女の瞳が赤く染まる。
「まーた泣くんだから」
「だって……」
「嬉しいから、だろ?」
こくりと桜子がうなずいた。
僕は彼女の体を包み込むと、背中をやさしく叩いた。
とん、とん……。
やさしいリズムで。
「なあ、桜子」
「ん?」
鼻声で彼女が答える。
「桜子の夢は、恋をすることだって言ってたよな?」
「うん」
「それってつまり、
“やさしくて意地悪なこと言わなくて、
スポーツジムのインストラクターとかしてる彼氏”との恋?」
「……ううん」