雪花-YUKIBANA-

両想いになった翌朝って、普通はもっと、甘い空気が流れてるもんじゃないだろうか。


それとも両想いなんて思ってるのは僕だけで、

桜子はそんなつもりなかったりするのか?


何か話したいのに……。

顔すらまともに見られない。


湧き上がる不安を振り払うように、僕はタバコの箱に手を伸ばす。


と、壁に立てかけるようにして置かれた、あのスケッチブックが目に入った。


なんとなく手にとって、ページをめくってみる。


「……えっ」


驚いた。

すでに一枚、絵が描かれてあったから。


いったいいつのまに描いたんだろう。

しかも、この絵って……


「あーっ!勝手に見ちゃダメ!」


台所から飛んできた桜子が、スケッチブックをひったくる。


「いいじゃん、見せてよ」

「ダメ!適当に描いただけだもん!」

「なあ、そのモデルってさ」

「ダメーっ!」

「俺だよね?」