雪花-YUKIBANA-

気まずい空気の中、桜子が用意してくれた朝ごはん。

玉子焼きも、
焼き魚も、
炊き立てのお米の香りも、

いつもと何ひとつ変わらないのに、

僕らだけが昨日までとは違っている。


「……うまいな」

「うん」

「……」


会話は照れくささに押しつぶされて、沈黙に変わった。


僕は味噌汁をすすりながら、ちらりと桜子を見る。


黄金色の玉子焼きが、彼女の口に運ばれていく。


その唇の動きを見ていたら、とたんに気恥ずかしくなった。


「あ、あのさ。風邪はどう?」

「……ん。だいぶ、マシ」


そっけなく答えて、桜子は食べ終わった食器を運ぶ。


台所に立つ彼女のうしろ姿を見ていたら、

昨夜の出来事がとたんに夢のように思えて、不安になった。