「この絵、桜子が?」

「うん」

「うまいなあ。コンクール入賞はだてじゃないな」


そう言うと桜子は嬉しそうに微笑み、

眠気のせいなのか、僕の肩にコテンと頭を乗せた。


「拓人が遅いから、落書きでもして待っていようかと思って」

「ああ、ごめん。ちょっと寄り道しててね」

「そう……」


彼女は目を閉じて、再び眠りにいざなわれようとしている。


「桜子、ちゃんとベッド行って眠りな」

「ん……」


彼女がいっこうに動こうとしないので、
僕はなんとなく肩を貸したまま、もう一度絵を見た。


決して描きこんでいないのに、精密なデッサン。

今にも小鳥が羽を広げ、巣から飛び立ちそうなほどだ。


そういえば、死んだ父さんも絵がうまかったな。

血のつながりはなくても、親子ってことだろうか。