「んじゃ、そろそろお開きとするか。
ここは俺が払う――…って、
ああーっ!!」


突然絶叫する義広。


「ど、どうしたんですか」


「財布なくした」


……おいおい。


「盗まれたりなくしたり、
金難の相が出てるんじゃないですか?」

「……すまん」


二人分の代金を支払った僕に、義広は深々と頭を下げた。


しょんぼりした表情がおもしろくて、
僕は気づかれないように笑いをかみ殺す。


「悪いな。何から何まで迷惑かけっぱなしで」

「ほんとですよ、まったく」

「次に会ったときは、絶対俺がおごるからさ」


しかたないな、という表情で僕が肩をすくめると、

彼はイタズラして逃げる子供のような笑顔で走り去った。


あれだけ飲んでも足取りはしっかりしている義広。


おもしろい奴だ。