付き合い始めて2年が経とうとしている頃からだった。
翔馬が私に興味を示さなくなったのは。
髪を切っても気づかない。
いつもと違う香水をつけても気づかない。
前は違っていた。
髪を切れば気づいてくれたし、
香水も気づいてくれた。
なんなら鞄を変えたことまでも気づいてくれていた。
そんな些細なことが、
私はどうしようもなく、
嬉しかったのだ。
翔馬はそんなこと知らないだろうけど。
だけど、翔馬に気づいてもらうたびに、
くすぐったくも、温かい気持ちになっていた。
『ねえ?赤ちゃん、男の子かな?女の子かな?
あなたはどっちがいい?』
『俺?どっちだっていいよ。
俺とお前の子が元気で生まれてくれさえすればね。』
そんな会話をしながら若い夫婦が私の横を歩いて行く。
…いっそのこと、子どもでもできた。
そう言ってやろうか。
そしたら翔馬はどんな反応をしてくれるのだろう。
喜んでくれるのかな。
そしてそれがウソだと分かった時、
翔馬は笑って許してくれるかな。
私が寂しかったと、気づいてくれるのかな。
そんなことを考えてふっと笑ってしまった。
だって、こんなウソ、何にもならないんだから。
どうせ、私自身が傷つくだけなんだから。
それに…私の中で、答えは決まっているのだ。
今後、翔馬とどうしていくか。
という答えがもうすでに、私の胸の中にはあった。
だけど、それが本当に正しい答えなのか。
自信はまったくと言っていいほど、ない。


