画布の中にたたずむのは、すこぶるつきの美少女だった。
 水晶のような青い瞳が、優しげに微笑みかけてくる。

 少女は、メディアの隣にいる青銀の髪の青年に酷似していた。
 女装した彼を描いたものだと、言われても納得できるほどに。

「どこが私に似ているの! ロランツ、あんたに似てるよ」

 メディアは、青年に振り向くと、そう食ってかかった。彼女は常々、この青年の父であるウィルランド国王に、妃の若い頃にそっくりだと言われ続けていた。

 しかし、当の王妃は、王宮どころか、ウィルランドすらにもいない。それで、若い頃の肖像画を見せてもらったのだった。

「この画家の腕はあまりよくなかったからな。人の外面は写せても、内面までは描き出せてない」

 青銀の髪の青年はこともなげに応えた。